■ Pocoのライヴレポート



■ July 24, 2005, Humphrey's Concerts by the Bay, San Diego, CA. U.S.A.

Humphrey's   Humphrey's Concerts by the Bayは夏のサンディエゴの風物詩だ。毎年4月から10月にかけて、サンディエゴ港に面したシェルター・アイランドはHumphrey's Innの横にある1000人ぐらいの野外会場で、毎晩のようにライブが開かれる。基本的には年配の聴衆をターゲットにして、ベテラン出演者が中心のHumphrey'sで、Pocoはここ数年レギュラーとなっている。昨年はアメリカとのダブルキャストとはいいよう、実質的には前座扱いでがっかりしたのだが、今年はRichieと共演のメインアクト、しかも前座がこれまた気になるベニスということで、見逃す手はないと休暇を一日延長して臨んだ。現地でojai_girlさんと合流という予定で、切符は彼女にとってもらったのだが、発売当日日本で朝3時にパソコンの前に座って取ってくれたその席は、ステージ正面の13列目という素晴らしい場所だった。
  今日はベニス、Richie、Pocoとトリプルアクトなので、まだ日の沈まない6時(夏時間なので東京の5時)にベニスのステージがスタート。PatとKipp、MichaelとMarkという従兄弟同士の二組のLennon兄弟から成るベニスは、LA郊外のベニス出身の25年ぐらいの歴史のあるバンド。なぜか本国ではあまり売れておらず、オランダでトップスターになっているという不思議な人たちだが、ステージであれだけきれいなハーモニーを聴かせるバンドはちょっとない。今日のステージではドラムとベースを加えた6人編成、両側のPatとMichaelがギターを弾きながらハーモニーをつけ、真中のMarkとKippが交互にリードボーカルを取る。特にMark Lennon(ちょっと仕草がおかまぽかったが)の声はMichael McDonaldを思わせるきれいなテナーだ。
MCを一手に引き受けるKippが、高校生の頃電話で参加するラジオの喉自慢番組に出てPocoのCrazy Loveを歌ったことや、以前にJack Sundrudと一緒に曲を書いたことなど、Pocoとの縁を話す。「でもCrazy Loveはやらないよ、僕らはクレージーじゃないからね。前座がメインアクトの持ち歌を歌ったら大変だ」 新アルバムからの選曲2曲を含む全12曲、約1時間のステージは、これだけでも入場料の価値がありそうな演奏だった。
1. Rivers Never Run / 2. Always / 3. Right where We Left Off / 4. Back to the Well / 5. We're Still Here / 6. End of the World / 7. The Family Tree / 8. Road to where You Are / 9. Landslide / 10. One Quiet Day / 11. Think Again / 12. If I Were You
  二組のLennon兄弟は、それぞれ11人、13人という大勢の兄弟姉妹がいる(でもJohnはいないそうだ)。PatとKippの姉4人が結成したLennon Sistersは、60年代初め(!)にヒットチャートをにぎわしたこともあるらしい。会場にも一族が駆けつけていたが、そのような家族の絆を歌ったThe Family Treeは、実に感動的なアコースティックバラードだ。ベニスに興味を持たれたPocoファンの皆さんは、ちょっとAOR気味の最新アルバムより、手に入りにくいが、オランダのテレビ生演奏をCD化した『2 Meter Sessies』を聴いてほしい。彼らのステージの様子がつかめると思う。
  ちなみにこのアルバムにはJackson BrowneとDavid Crosbyがゲスト出演している。彼らのHPは右のバナーをクリック(サウンドクリップたくさんあり)。 Venice Central

 20分ぐらいの休憩をはさんで、Richie Furayのセットが始まった。相棒のScott Sellenに加えて、今夜はScottの息子のベースとその友人のパーカッションがリズム隊として参加。このパーカッションというのが太鼓ひとつをいろいろな叩き方で叩くというもので、音がぼこもこして非常に聴きづらかった。普通のドラムスを入れればよかったのに。
  ステージの方は、いきなりAnd Settlin Down/Hurry Up/Fallin in Love/C'monとPoco/SHF時代の曲のメドレーでスタート。ギターを抱えたRichieはとても牧師さんには見えないが、ojai_girlさんによればこの日(日曜日)もステージの前にきちんと教会で説教をしてきたのだそうだ。Richieの挨拶に次いで『Legacy』からWhen It All BeganでPocoの歴史に敬意を表明した後は、「これを覚えてるかい」という掛け声とともにJust in Case It Happens, Yes IndeedでPocoファンを沸かせる。その次は5年ぐらい時代が下がって、SHFのファーストに収められていたBelieve Me(ポコのバージョンも『Forgotten Trail』で聴ける)。高音部分になるとさすがに昔ほどの伸びはないが、味わいのある歌を聴かせる。
  Believe Meが終わると、Richieは自分がPocoを抜けた経緯、友人がみな有名になっていく中で取り残されて焦った彼が、音楽業界の友人("David")の誘いに乗って自分勝手に第二のCSNを目指してSHFを結成したこと、さらにそのあと神に目覚めて牧師になったことなど、Pocoを抜けた後のことを赤裸々に訥々と語った。客席から、市長選に立候補しろと声が飛ぶ(サンディエゴでは前の市長がスキャンダルで辞職したのを受けて市長選挙の真っ最中だった)。この長いMCの後のIn My Father's Houseでは、舞台のすそからRustyとPaulが飛び入りでコーラスをつけてRichieを驚かせた。いろいろあっても彼らの絆は強いということを印象づけるシーンだった。最近のクリスチャンアルバムからさらに2曲を聴かせた後、最後はJust for Me and Youで締めた。
1. And Settlin Down/Hurry Up/Fallin in LOove/C'mon / 2. When It All Began / 3. Just in Case It Happens, Yes Indeed / 4. Believe Me / 5. In My Father's House / 6. Wake Up My Soul / 7. Go and Say Good bye / 8. Just for Me and You



 
  ショーが始まって2時間を超え、すっかり日も落ちて暗くなった。また20分ぐらいの休憩の後、舞台が暗くなったかと思うとさりげなくPocoのステージが始まった。舞台に向かって左からPaul、Rusty、Jack、後ろのドラムスはGeorge Lawrence。野球帽をかぶったPaulとRustyは、そのへんのおっさんといった格好で、全くロックミュージシャンには見えない。青シャツに白帽子というPaulは競艇場にでもいそうな感じだし、白いTシャツにダンガリーシャツをだらっと羽織ったRustyはローディと間違えそう。Rustyがエレキギターを抱えてのAOR風のイントロから始まった一曲目は意表をついてLegend、ばりばりのロックバンドだ。PocoのMCはほとんどRustyが引き受けるが、Legendを終えての第一声は「あんなにたくさんPocoの曲をやる前座は初めてだ…いったいあいつは誰だい」というジョークから。おなじみ"Call It Love"に次いで「この曲はPocoの歌で一番カバーされた曲なんだ。中でもEmmylou Harrisのカバーがよかった」というMCで演奏されたシマロンの薔薇は、KTLAと同じさびの部分から始まる最近のアレンジ。
これまでずっとギターを弾いていたRustyが、ここでマンドリンに持ち替えて、いよいよカントリーロックかと思ったら、また意表をついてUnder the Gun。マンドリンをかき鳴らしながらのUnder the Gunは、僕にはかなり違和感があった。そもそもそんなにいい曲か、とも思う。マンドリンは一曲だけでおしまいで、再びRustyはギターにスイッチ。ミッドテンポのいい感じのギターリフで次の曲のイントロが始まったが、Rustyがしきりに何かを気にしていると思ったら、「やっぱりこれはちゃんとしなけりゃダメだ」というと演奏を止めてしまった。どうやらRustyのギターのモニターの音が聞こえないらしい。若い男の子が出てきて一所懸命あちこちいじっているが、なかなか直らない。手持ち無沙汰のRustyは、「海賊ジョークを聞きたいかい?」結局ジョークが始まる前にモニターの音は出たが、「まだ海賊ジョークを聞きたい?海賊が酒場に…」ジョーク自体はたいしたことはないが、Rustyが海賊のまねをして出す「Aaaarg!」という声が観客に受けて、ステージが終わるまで何かへまがあると会場から「Aaaarg!」と声がかかっていた。
  ジョークが終わるとさりげなく中断したイントロに戻って、始まったのがSave a Corner of Your Heart。『Inamorata』収録のこの曲は、実は僕ははじめて聴く歌だったが、メロディのきれいな佳曲だった。ここでRustyは再度マンドリンに持ち替えるが、またしても接続がうまくいかず、例の若い男の子がばたばたする。その間に、今度はJackが海賊ジョークを披露。ジョークとしてはこちらの方が洒落ていた。マンドリンに乗せた今回唯一の『Running Horse』からの選曲は、JackのShake It。Pocoのナンバーとしてはちょっと毛色の違う歌だが、最近のPocoのステージでは定番になりつつあるようだ。Jackの歌が聴けたのはこの曲だけだった。今回もまるでスティールを弾かないRustyだが、ここでようやくべダルスティールが登場、奏でるのはPaulの持ち歌Indian Summer。僕の大好きなナンバーの一つだ。Paulのギターもいい音で鳴る。イントロでスティールがシタール風の音色を出していたのは、IndianにかけたRustyの遊びかもしれない。最後のスティールの音が余韻を残して消えると、Rustyはもうギターに戻ってしまう。
  「もうすぐ新しいライブレコードが出るんだ」というMCで拍手が起こる。「モンタナのベアバックというところで録音したので『Bareback』という。僕らのウェブサイトで注文できるよ。poconut.comでは他に、Jack Sundrudは新しいソロアルバムを売っているし、Paul Cottonも『When the Coast Is Clear』という新しいアルバムを売っている。それとこれは言いたくなかったんだけど、僕らのドラマーGeorge Lawrenceは何も売るものがない。ただし50ドル払えば君の家に行ってドラムソロをやるってさ」そのアルバムのタイトルソング、全くの新曲Barebackをここで演奏。Paulがリードボーカルを取るギターベースのロックソングだ。
  「何曲かアコースティックな曲をやる」というRustyのMCで、PaulとRustyがアコースティックギターに持ち替える。「最初の歌はTim B. Schmitの曲だ。Timといえば最近はどこいっちゃったんだろう。電話もしてこないし」ということでKeep On Tryin'だが、George G.と違ってGeorge L.はドラムスはいいけど歌わないので舞台の裾へひっこんでしまう。3人ではやや苦しく、ワンコーラスだけであっさり切り上げて、次はCrazy Love、こちらは客席参加でカラオケ状態。そして最後はPaul Cottonが弾き語りでBad Weatherを歌う。「PaulがPocoに入って、初めて僕らにこの歌を歌ってくれたときと同じスタイル」だそうだ。
 Rustyの「紹介します、サンディエゴの次期市長、Richie Furay」というアナウンスにのり、お待ちかね、Richie登場。Scott Sellenもキーボードで加わって、舞台が一気ににぎやかになる。Richieのギターの接続がまたしてもうまくいかず、なかなか演奏が始まらない。RustyがRichieに「海賊ジョーク知ってるかい?」Richieとのなりそめやら、あげくは「RichieがPocoを辞めたのは、バンドの名前をRichie Furay and Pocoに変えようとしたからで、自分勝手だったからじゃないんだ」などときわどいジョークまで飛び出す。やがてRichieが歌いだしたのは、お馴染みPickin' Up the Pieces。次いでRustyがスティールの前に座って、今度はRichieとRustyが出会うきっかけとなったKind Woman。 Poco@Humphrey's
  ちょっとブルースロック風のギグをイントロに、バッファロースプリングスフィールド時代のA Child's Claim to Fame、ほとんど間をおかずLet's Danceと歌ったところで、RichieとScottはいったん退場。最後にRustyのスティールが大活躍のHeart of the Nightを4人でやって、大歓声の中ステージが終了した。
 もちろん、これではあの歌をまだやっていない。当然このままで終わるはずはなく、アンコールでは再びRichieとScottを呼び出して、さらに「若い連中に歌い方を教える」ということでベニスの4人まで引っ張り出して、A Good Feelin' to Know。コーラスメンバーが多すぎてマイクが足りず、ベニスのメンバーやJackがあちこち動き回っていたのが印象的だった。
A Good Feelin' to Know

 やはりRichie参加、メインアクトということで、バンドの気合の入り方は2004年に観たときとはまるで違っていた。前座のベニスも含め、大変素晴らしい夜だったと思う。ただ舞台のモニターのセッティングや楽器の接続がスムーズでなく、楽器の持ち替えに時間がかかってかなりばたばたしたのが残念だった。本家poconut.comのボードでは、会場の音響セッティングが悪く、音がとても悪かったという話題が盛り上がっていたが、個人的にはRichieのステージの太鼓以外はそれほどとは思わなかった。この件についてはGeorge Lawrenceが書き込みをしているので、それを引用しておく。
  Humphrey'sでの問題は、基本的には音響を受け持っていた会社が新しく雇ったモニター係が未経験だったということにある。[リハーサルのときの]モニターボードの僕らのセッティングはマークされておらず、最初の二つのバンドが演奏した後正しい設定に戻されなかった。楽器の入力ラインの割当はバンドごとに違うし、会場のサウンド係はたぶんPocoをよく知らず、加えて技術的な問題もあった。こういうことはあるものだ。ショーのプロモーターは問題に気付いていて、僕らと話もしたし、手も打ってくれるだろう。彼はいい奴だよ。モニター係の若い奴は気の毒だった。僕もだいぶ叱ったしね。ステージについて本当に学べるのは失敗を通してだけだし、きっと奴はあの晩いろんなことを学んだと思う。全体としては、Humpherey'sのライブはいいできだった。
(poconut.comへの投稿より / 日本語訳:J-BOY)

1. Legend
2. Call It Love
3. Rose of Cimmaron
4. Under the Gun
5. Save a Corner of Your Heart
6. Shake It
7. Indian Summer
8. Bareback
9. Keep On Tryin'
10. Crazy Love
11. Bad Weather
(Richie Furay and Scott Sellen join)
12. Pickin Up the Pieces
13. Kind Woman
14. A Child's Claim to Fame
15. Let's Dance
(Richie and Scott leave)
16. Heart of the Night
(encore, with Richie, Scott and Venice)
17. A Good Feelin' to Know



Rustyの海賊ジョーク

海賊が酒場にやってきて、エールを一杯注文する。
バーテンダーがビールを持ってきて言う。
バーテンダー「どうしたんですかい、こないだ見たときは両の足があって、そんな義足じゃなかったですが」
海賊「ァ〜グ!大砲の弾が足にあたったんでえ」

海賊はもう一杯ビールを注文する。
バーテンダー「どうしたんですかい、こないだ見たときは両の手があって、そんな鉤はついていなかったですが」
海賊「ァ〜グ!剣闘でやられたんでえ」

海賊はまたもう一杯ビールを注文する。
バーテンダー「どうしたんですかい、こないだ見たときは両の目があって、そんな眼帯はしていなかったですが」
海賊「ァ〜グ!鳥の糞が目に入ったんでえ」

「そりゃ大変だったが、それで目をなくしたりはしないでしょうに」とバーテンダーが訊くと、
海賊「ァ〜グ!手に鉤をはめた最初の日だったんでえ」
Jackの海賊ジョーク

海賊が肩にオウムを乗せて酒場にやってくる。
バーテンダーが「どこでそいつを見つけたんで?」と訊くと
「桟橋でえ。そこらじゅうにうじゃうじゃいるぜ」とオウムが答える。

(All Text by J-BOY photo by ojai_girl & zogtone, poconut@U.S.A.)



BACK INDEX NEXT