■ Pocoの歴代メンバー



■ ラスティ・ヤング Rusty Young

  ラスティ・ヤングこと本名Norman Russel Youngは、1946年2月23日カリフォルニア州のロングビーチで生まれた。
根っからのCountry Musicファンであった両親が玩具代わりに買い与えたラップ・スティールをきっかけに、13歳の時に入手したFender 100(一世代前のワイアー式ペダル・スティール・ギター)を毎日数時間練習する熱心な音楽少年であった。
  コロラド州に移り住み、わずか12歳という年齢にも関わらずプロミュージシャンとして人前で演奏をしていたペダル・スティール・ギタリストのラスティ。その彼がアイドルとして崇めていたスティール・ギタリストは・・・、

数々の名演を残しJimmy Bryantとの共演盤で知られるSpeedy West(スピーディ・ウェスト)
日本国内でも数度の公演を行ったノンペダル・スティールの大家Jerry Byrd(ジェリー・バード)

その他にも影響を受けたスティール・ギタリストとして、

現在のペダル・スティール・ギターの開祖ビッグEこと、Buddy Emmons(バディ・エモンズ)
そのスタイルを堅持し続けた大御所Jimmy Day(ジミー・デイ)
ウェイロン・ジェニングスのバックで独特のサウンドを作り出したRalph Mooney(ラルフ・ムーニー)
などがあげられる。

  デンバーで活動していたバンドBoenzee Cryqueには、朋友Geroge Granthamの他に、New Grass RevivalのリーダーとなるSam Bushが在籍していたことはあまりにも有名だ。まさか四半世紀後に、The Sky KingsでNGRのJohn Cownと肩を並べることになるとは誰にも予想できなかったことだろう。
  1968年にバッファロー・スプリング・フィールドのツアー・マネージャーだった(ラスティがスティールを教えていた)マイルス・トーマスが橋渡し役となって、Richieが熱望していた「Kind Woman」のペダル・スティール・ギターをラスティが弾くことになる。L.A.へ移ったラスティは、そのままPocoの前身Pogoへ加入と相成った。
  その後は、RandyやJimの脱退、TimothyやPaulの加入を経て、Richieを中心とした盤石のPoco体制を構築する大きな役割を担っていた。転機が訪れたのは1973年、グループの看板歌手であったRichieの脱退である。それまでメンバーとの共作やスティール・ギターのインスト・ナンバーこそあれ、自らの楽曲をそれほど提供していなかったラスティは、ここからソング・ライティングの才能を開花させていく。
  精力的に楽曲製作を行うが、同時にギタリストとしても活躍していた彼を、昔ながらのPocoファンは「もっとスティールを弾いて欲しい」と思っていたはずだ。TimothyとGeorgeの離脱によって、そういった願いはさらに叶わぬ方へ向かう。だが、「Crazy Love」のヒットや、後年Emmylou Harrisがヒットさせた「Rose of Cimarron」はラスティのソングライターとしての地位を確立する大きな要因になったともいえる。
  さらに、FAB4時代以降のラスティは、生来の楽器好きが高じて、スティール・ギターやリゾネイター・ギターにとどまらず、ギター、バンジョー、マンドリンなどブルーグラス系の楽器をバンドのサウンドに加えていった。これらがPocoのカラーにもなり、今現在もPoco=Rustyという図式が定着した所以であろう。
Al GarthがPocoを離れた後のインタヴューでは「これからフィドルを演ろうと思っているんだ」と話していたが、実現には至らなかったようだ(苦笑)
  Pocoスタート時から激しいメンバー交代が行われる中で、その時期の立場からは考えられないほど重要なポジションで活動を続ける現在のラスティだが、「JimやRichieやTimothyが抜けていって自分がやらなければならないことが増えてきただけなんだ」という、飄々としたその姿勢がこれからもPocoを続けていくであろう期待感を持たせてくれる。嬉しい限りだ。
  これからもCountry Rockにおける最も代表的なシンガー・ソング・ライター・ペダル・スティール・ギタリストであり続けるのは間違いないだろう。

◆ Rusty's Gear
  今でこそ、数多くのメーカーが軒を連ねるペダル・スティール・ギターのブランドだが、ラスティがスティール・ギターを弾き始めた頃には、大手のFender以外わずかのメーカーしか存在しなかった。
Shot JacksonとBuddy Emmonsが設立したSho-Budというペダル・スティール・ギターのメーカーは、この楽器の材質、構造、演奏性を飛躍的に向上させたことで有名である。トランプのマークをトレードマークにしたこのメーカーは、硬い上質のメイプル材を本体の素材として使用し、軽い正確なアクションを実現したペダルのチェンジャーメカニズムはまさに画期的であった。多くのプロユーザーの愛器として重宝された事実がこれらを裏付けている。これに対して、Buddy Emmonsが独立して立ち上げたEMMONSというブランドは、ネックの素材に音の伸びに配慮したアルミ素材を持ち込み、その音のキレに驚いたプレイヤー達によって徐々に市場へ浸透していく。70年代から2大メーカーとして双璧をなしていたSho-BudとEmmons、前者は柔らかい綺麗な音色を、後者は固い歯切れの良いサウンドを特徴とした実に対照的な位置関係にあったのだ。

Sho-Bud Pro2 Sho-Bud Emmons D-10
Emmons

  Fenderから乗り換えたラスティは長年Sho-Budを愛用した。彼がSho-Budのダブルネック・モデルを使い続けていたことで、ある意味Pocoのカントリー・フレイバーは、Sho-Budのペダル・スティール・ギターが一手に引き受けていたともいえよう。
  その後、Sho-Budはグレッチ社が販売を行っていたが、現在この製品を中止したことで、中古市場でしか入手できないアイテムとなった。 Carter Steel Guitars
現在ではテキサス州にあるCarter Steel Guitarsと契約を結んでおり、このメーカーの楽器を数台使い分けている。

  そもそも、ペダル・スティール・ギターは、Buddy Emmonsが開発したE9thクロマチックとC6thチューニングが上下それぞれのネックに設定しているのが一般的ではあるが、これが必ずしもすべてのプレイヤーに当てはまるとは限らない。しかも、通常シングルネックが3本、ダブルネックでは8本のフロアペダルのセットアップ(踏んだときに変わる音程)が個人によって全く異なるから複雑だ。そしてこちらが、ラスティの基本チューニングである。
Front Left Knee Floor Right Knee
E9th LKL LKU LKR 1 2   3 4 5 6 8 RKL RKR
F#
Eb D/C#
G# A
E Eb F#
B A C# C# Bb
G# F# A
F#
E Eb
D
B C# Bb

Rear Left Knee Floor Right Knee
C6th LKL LKU LKR 1 2 3 4   5 6 7 8 RKL RKR
G G#
E F
C D B
A B B
G F#
E Eb
C C#
A B
F F# E
C D A

ラスティのリアネック(C6thチューニング)は比較的一般的なものだが、フロントネック(E9thチューニング)は少々特殊である。通常(これとて特殊かも?)は、このような設定である。下の黄色い部分と上のラスティのピンク色の部分とを比較して欲しい。
Left Knee Floor Right Knee
E9th LKL LKU LKR 1 2   3 4 5 6 8 RKL RKR
F# G
Eb D/C#
G# A
E F Eb F#
B C# C# Bb
G# A
F# G
E F Eb
D
B C# Bb

  お解りのようにフロアペダルの「1」と「3」が逆である。グランド・オープリーの常連プレイヤーだったWeldon MyrickやHal Ruggなどもこのスタイルで、ラスティに近いところでは、リンダ・ロンシュタットのバックで知られ、カーラ・ボノフの初来日に同行したEd Blackも同様のセットアップとなっていた。ペダル・スティール・ギタリストにとっては最も使用頻度の高いペダルだけに、重要なポイントではある。
  ラスティのプレイは恐ろしく正確だ。スライド・バーは常に安定した音程を作り出し、リズムも、完璧といえる。ペダル・スティール・ギターの命ともいえる(右手で音を切る)ブロッキングにしても、昔ながらの小指側の手の腹を使うパームブロックと近代的な弾いた指(ピック)で弦を抑えるピックブロックの両方を見事に使い分けている。ただ単に、「斜め弾き(コレ私が勝手に命名^^;)」ばかりでウケを狙っているのではなく、しっかりとした基本と弛まぬ鍛錬に支えられた確固たる高度な技術が、観て聴いて楽しめるエンターテイメントを作り出している。


Leslie   『Pickin' up the Pieces』の「Nobody's Fool」で聴かせる"あのオルガンのような音"とよく話題になる初期のPocoに聴かれるオルガン・サウンドエフェクトだが、実は、レスリー・スピーカーでペダル・スティール・ギターを演奏すると、あのようなハモンドB3のようなサウンドが得られるのだ。左写真のキャビネットに収められた右画像のような2本のホーンパイプがくるくると回りながら拡声されることで、独特なヴィヴラートとなる。この効果をペダル・スティール・ギターに応用したラスティはかなりのアイデアマンである。 Speaker
  同じく『Pickin' up the Pieces』に収録された「What a Day」では、木製のバーを使ってペダル・スティール・ギターでバンジョーのようなサウンドを作り出した。また、「Indian Summer」のシタールのような効果音は、弦にあたる部分が平らなシタール・バーと呼ばれるものだが、使用するスティール・ギタリストはそう多くはない。ちなみに、ラスティのシタール・バーは、ヘキサゴン(六角)タイプのバーである。
  ラスティのステージにはラップ・スティールも欠かせない。リッケンバッカーの恐らくは193〜40年代のフライパンと呼ばれる6弦のモデルを多用していたが、最近は古いリッケンバッカーのオール・アルミ製の6弦を使用している。スライド・バーは、ペダル・スティール・ギター用の大きなタイプをそのまま使用、1990年の来日公演では、ビール缶や傘の柄部分をバー代わりにして会場を沸かせていた。 Lap Steel
(Photo by Richie Furay Fan)

(Poco_Riders)



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