■ Pocoのディスコグラフィー



■ The Last Roundup (2004)

The Last Roundup

01. Livin' In The Band (Cotton) 03:16
02. Dallas (Fagen/Becker) 03:35
03. Magnolia (Cale) 06:45
04. Honky Tonk Downstairs (Frazier) 02:45
05. When You Come Around (Cotton) 03:16
06. Sagebrush Serenade (Young) 03:32
07. Indian Summer (Cotton) 04:03
08. Too Many Nights Too Long (Cotton) 05 20
09. Starin' At The Sky (Schmit) 02:56
10. Twenty Years (Cotton) 04:54
11. The Dance (Young) 09:59
12. Keep On Tryin'  (Schmit) 02:43
13. Hoe Down (Furay/Young) / Slow Poke (Young) 03:54
14. Rose Of Cimarron (Young) 05:35

■ アルバムレヴュー

 アーティストがライブアルバムを発表しよう決意するのに必要な条件とは何だろう。一般的に言われるように、それまでの活動に一区切りさせる意味合いもあろうが、もっと根源的な意志があるはずだ。自分達のライブパフォーマンスに対する自信に裏打ちされた自己顕示欲ともいうべき気持ちが・・・。
 Pocoは結成当初からライブパフォーマンスには定評のあるバンドで、今のところ(2004年12月現在)4枚のライブアルバムを発表している。『Deliverin'』(71)は70年録音で、3枚目のアルバムとして発表され、活きのいい溌剌とした演奏は、Pocoのライブでの実力を存分に見せつけた好盤だった。『Live』(76)は74年録音で、レコード会社移籍に伴い、古巣Epicが会社の方針として発表したアルバムだった。Pocoが望んだリリ−スではないにしろ、Jim Messina、Richie Furayが脱退し、存続を危ぶまれたPocoが4人でも十分にやっていける事はもちろん、新たな魅力をも提示してくれた。そして時は流れ、2004年になって『The Last Roundup』と『Keeping The Legend Alive』が届けられた。『Keeping The Legend Alive』は2004年の録音で、Pocoの近況をDVD付きで伝えてくれる内容で、昔からのファンには何ともうれしいリリースだった。
 そこで『The Last Roundup』である。リリースこそ2004年だが、音源は77年の物なのだ。実はこのアルバムは当初からライブアルバム用に録音されたもので、そのままお蔵入りになっていた音源だ。マニアの間では密かに流通していたようだが、それが27年経ってようやく日の目を見た形となった。お蔵入りの理由は明らかにされていないが、録音直後、TimothyがEaglesに移籍した事が影響していると推察する。
 ここで考えてみて欲しい。前述したように、Pocoは76年に『Live』を発表したばかりだ(録音は74年)。たとえそれが、レコード会社主導でPocoが望まぬリリースだったとしても、その翌年ライブアルバムの準備を進めるという事が、一体どういう意味を持つのか。私はここに「区切り」や「商売」とは別次元の「ミュ−ジシャンとしての本能」を感じる。自分達のライブパフォーマンスをもっと多くの人に知って欲しい、という本能を。
 『Indian Summer』発表直後ということもあり、プロデュ−スは前3作同様Mark Harmanが担当している。アルバムは「Living In The Band」で始まる。『Indian Summer』からの選曲で、Paulのペンによるもの。自分達の事を歌った内容のストレートなロックチューンだが、オブリガード的に挿入されるRustyのスティールやPaulのリ−ドギタ−は聴き物だ。
 曲間なく、メドレ−的に始まる「Dallas」は『Head Over Heels』からでDonald FagenとWalter Beckerの曲。メンバ−の曲ではないものの、ルーズなリズムに乗ったコーラスや、後半のライブならではのRustyのスティールギターなど、まさしくPocoの曲になっている。
 メンバー外の曲が続く「Magnolia」は『Crazy Eyes』からでJ J.Caleの曲。地味だが、とても美しいメロディーを持った曲で、ドラマチックに盛り上げていくスティールギタ−をバックにPaulの泣きのギタ−が何とも切なく響く名演だ。
 「Honky Tonk Downstairs」は『Poco』からでDallas Frazierの曲。ゆったりとしたカントリー調の演奏で、スタジオ盤ではRichieがとっていたリードボーカルを、ここではTimothyがRichie然とした歌声を聞かせる。
 続く曲もカントリースタイルで、『Rose Of Cimarron』から「P.N.S(When You Come Around)」はPaulの作曲。ポールのボーカル力を堪能できる曲で、それに被さるコーラスも溌剌としていてゴキゲンなトラックだ。
 「Sagebrush Serenade」はRustyの曲で『Cantamos』から。原曲ではフォーク調のギターと軽いスティールギターのみのの前半部とアップテンポの後半インスト部の構成になっていたが、ここでは前半からアップテンポで軽快な演奏が楽しめる。Rustyはどうしてもスティールギターのイメージが強いのだが、アルバムでもインスト曲を中心に、かなりバンジョーを弾いており、腕前もかなりのものだ。こういったインストをライブで余裕たっぷりに演奏できるのは、Pocoの面目躍如といったところか。
 続くはPaul作で『Indian Summer』からの表題作。Paulの書くメロディは、うねりが少なく、語る調子で綴られる場合も多く、この曲も例外ではない。そのク−ルな印象とはうらはらな熱くねばりのあるギターも聞きものだ。
 Paulの曲が続く。「Too Many Nights Too Long」は『Rose Of Cimarron』からの選曲。基本的にはスタジオ盤と同じアレンジだが、この違いはどうだ。Paulはアコースティックギターをかき鳴らし、Rustyのマンドリンが宙を舞うように響きわたる。コーラスも広がりがあり、端正なスタジオ盤とは違った、非常に生々しい演奏になっている。アコースティックセットでも単調にならないあたりに、確かな演奏力を感じる。
 続く「Starin' At The Sky」も『Rose Of Cimarron』からで、リ−ドボ−カルをとるTimothyの曲。この曲も前曲と同様で、アルバムと同じようにアコ−スティックをベースにしたアレンジだ。スタジオ盤でフィーチャーされていたサックスのソロがギタ−に置き換わっている。
 「Twenty Years」は『Indian Summer』からのロックチューンでPaul作。先ほどまでカントリー調の演奏していたバンドと同じバンドとは思えない幅の広さだ。ドライブ感も十分なハードエッジな曲だが、何といっても、PaulとRustyのギターバトルを存分に楽しめるのうれしい。
 「The Dance」も『Indian Summer』からでRustyの作曲。3つのパートからなる組曲風の曲で、途中のパートではGeorgeのリードボーカルも聴ける。後半はスタジオ盤同様、オーケストレイションを施し、スケールの大きな演奏を聞かせてくれる。
 続いてTimothyのペンによる「Keep On Tryin'」は『Head Over Heels』から。極めてシンプルなギターをバックにボーカルだけで勝負するこの曲のスタイルは、Timothyの得意のパターンになるのだが、ここではコーラスもばっちり決まっていて、スタジオ盤の瑞々しさがそのまま再現されている。Pocoは誰がコーラスにまわっても、完璧なハーモニーを奏でられるバンドだという事を再認識させられる。
 ここでPocoの創始者で初代リーダーともいうべきRichie Furayが登場する。Richieは脱退以来Pocoと共演するのはこれが初めてだったらしい。曲は「Hoe Down」で『From The Inside』からでRichieとRustyの共作。元気なカントリーロックで、楽しそうに歌うRicheの姿が目にうかぶようだ。メドレーになっている「Slow Poke」は『Rose Of Cimarron』からのRusty作のインスト曲。Rustyはバンジョー、ペダルスティール、そしてまたバンジョーと楽器を持ち替えて、Paulとの掛け合いに挑んでいる。ライブでは最も盛り上がるインスト曲だろう。
 最後を締めくくるのは『Rose Of Cimarron』からのRustyによる表題曲。静かに始まるイントロのアルペジオギタ−だけで、その場にいた観客の感動が容易に想像できる。この曲でもスタジオ盤同様、オーケストレーションを配し、スケールの大きなサウンドを奏でている。Paulのハイトーンボーカルはさらに臨場感溢れる生々しさで迫ってくる。
 全体としては、スタジオ盤にアレンジのベースを置きながらも、ギターのアドリブ的な奏法や、Georgeのドラムなど、随所に遊びを加え、さらにコーラスなどのライブならではの生々しさが目立っており、スタジオ盤とは別物になっている事を強調しておきたい。
 バンドによっては、スタジオ盤を完成形として、ライブはあくまでその再現の場とうい考えをもち、ギターのフレーズに至るまで同じ音を出すバンドもいるが、Pocoは演奏力に自信を持っていることもあり、自由な演奏形態のように感じた。27年間待たされた幻のライブアルバムは、Fab Fourと呼ばれる結束力の強い、確かな腕を持ったメンバー達が最も充実していた時期の、芳醇な収穫だ。
(Good Company)



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