■ Pocoのディスコグラフィー



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■ Forgotten Trail (1990)

Forgotten Trail

Disc: 1
01. Pickin' Up the Pieces (R. Furay)
02. Grand Junction (R. Young)
03. Consequently, So Long (S. Goodwin-R. Furay)
04. First Love (R. Furay) [remix]
05. Calico Lady (S. Goodwin-R. Furay-J. Messina)
06. My Kind of Love (R. Furay)
07. Hard Luck (T. Schmit)
08. Last Call (Cold Enchilada #3) (R. Young) [#]
09. Honky Tonk Downstairs (D. Frazier)
10. Hurry Up (R. Furay)
11. You Better Think Twice (J. Messina)
12. Anyway Bye Bye (R. Furay)
13. I Guess You Made It (R. Furay) [studio][#]
14. C'mon (R. Furay)
15. Hear That Music (T. Schmit)
16. Kind Woman (R. Furay)
17. Just for Me and You (R. Furay)
18. Bad Weather (P. Cotton )
19. You Better Think Twice (J. Messina) [acoustic][#]
20. Lullaby in September (J. Messina) [#]

Disc: 2
01. You Are the One (R. Furay) [live][#]
02. From the Inside (T. Schmit) [remix]
03. Good Feelin' to Know (R. Furay)
04. I Can See Everything (T. Schmit) [remix]
05. And Settlin' Down (R. Furay)
06. Blue Water (P. Cotton )
07. Fool's Gold (R. Young)
08. Nothin's Still the Same (R. Furay) [#]
09. Skunk Creek (R. Young) [#]
10. Here We Go Again (T. Schmit)
11. Crazy Eyes (R. Furay)
12. Get in the Wind (P. Cotton ) [#]
13. Believe Me (R. Furay) [#]
14. Rocky Mountain Breakdown (R. Young)
15. Faith in the Families (P. Cotton )
16. Western Waterloo (P. Cotton )
17. Whatever Happened to Your Smile (T. Schmit)
18. Sagebrush Serenade (R. Young)

#: 未発表トラック

■ アルバムレヴュー

 1990年発売の2枚組『The Forgotten Trail』は、1969年のデビューからABCに移籍するまでの6年間にポコがエピックに残した8枚のアルバムからの選曲に、アルバム未収録のシングル盤や未発表のアウトテイクを加えたものだ。ビジネス的には、前年1989年にオリジナル・ポコ復活盤の『Legacy』がヒットした尻馬に乗って、CBSが自分の蔵をあさってひねり出した企画もの、ということになろうが、この2枚組を単なる企画ものに終わらせていないのは、その丁寧な仕事振りだ。
 まず目を引くのは、重たそうな雪が舞う雪原を歩むバッファローの親子を描いたカバーだ。カントリー→中西部→バッファローという連想と、「忘れられた道」というタイトルにふさわしい寂寥感が見事にミックスされた印象的な絵は、スポーツイラストレーターとしても有名なBart Forbesの作品。手書きと思われるタイトル文字も含め、ポコのアルバムの中でも一、二を争う印象的なジャケットで、CDサイズなのがもったいない。
 今となってはやや古くさく感じられる両開きトリプルサイズのケースを開けると、35ページに及ぶブックレットには、収録曲ひとつひとつの録音日までが記された曲目リスト、音楽評論家として著名なWilliam Ruhlmannによる、Richie、Jimmy、Rusty、Paulへのインタビューを基にした25ページを超えるライナー、見開きページにはデビュー当時のものとおぼしき若きポコの写真。素肌にジーンズのつなぎを着て麦わら帽をかぶったJimmy Messinaが、ちょっと女の子のようだ。このブックレットだけでも十分価値がある。
 さらに、エピック時代のポコのベスト盤としても、いい選曲になっている。このアルバムが発売された当時、エピックの8枚のアルバムのうちCDで手に入ったのは『Poco』『From the Inside』『A Good Feelin' to Know』の3枚だけだった。『Legacy』でポコに触れた新しいファン、『Legacy』でポコを思い出した古いファンにとっては、手ごろなコンピレーションだったと思われる。かくいう僕も、ABC時代からポコに入門した口で、当時初期のポコは『Pickin' Up the Pieces』のLPしか持っていなかったので、こりゃいいやと思ったのを覚えている。全曲デジタルリマスターが施されている。
 ブックレットのライナーを手がかりに、収録曲を見ていこう。ディスク1のM1からM5までは、デビュー盤『Pickin' Up the Pieces』からの選曲。"First Love"だけはオリジナルマスターからリミックスされている。高音まで突き抜けるハーモニーとRustyの縦横無尽のスティールギターは、1969年という発表時期を考えると、まさに革命的だったに違いない。カントリーロックの魁として語られるGram Parsonsを加えたByrdsの『ロデオの恋人』と、グラスロックのパイオニアThe Dillardsの『麦わら組曲』が出たのが、ともに前年1968年。どちらもスティールギターやバンジョーなどの伝統的な楽器を全面にフィーチャーしていたが、誤解を恐れずに言えば、そのアプローチはカントリー、ブルーグラスにロックを持ち込んだものだった。一方『Pickin' Up the Pieces』のベースにあるのはあくまでロックで、そこにカントリーを持ち込むという反対のアプローチだ。それが一番よく表れているのが、"Grand Junction"のRustyのスティールの裏で刻まれるリズムだろう。タイトル曲の冒頭でRichieが「僕の歌うカントリー」というのも、だから一種の洒落、反骨だったのだと思う。このアルバムが「ロックにはカントリーすぎ、カントリーにはロックすぎる」という評価しか受けられなかったのは、時代とはいえ非常に残念なことだった。
 M6とM7は、デビュー盤の半年後に発売されたシングルの曲で、アルバムには収録されていないものだ。この録音からTimothy B. Schmitが加わっている。シングルではA面にあたる"My Kind of Love"よりも、Tim作のB面"Hard Luck"の方がヒット性がありそうに思うのだがどうだろう。いかにもTimらしい親しみやすいメロディながら、後の"FAB4"〜Eagles時代の彼の繊細な曲調や歌とはやや違う、若さにあふれたTimの歌を聴くことができる。この曲は後に『Deliverin'』にメドレーの一部としてライブバージョンが収められている。
 M8からM12までの5曲は、1970年発表の二枚目『Poco』用の曲だが、"Last Call"だけは、同じセッションからの未発表アウトテイクだ。その"Last Call"はRusty作のインストナンバーだが、Jimmyのものと思われるちょっとジャジーなエレキギターが印象的な佳曲だ。一枚目の不評を受けて、それならもっとエッジの立ったアルバムを作ろうと思ったということだが、ベースがTimに替わったせいか、エンジニアが新しくなったせいか、デビュー作よりベースのうねりが出てきたように思う。『Poco』のB面は片面全部がインストの長いジャムセッションにあてられていたが、Richieによれば、「その頃はたくさんのグループがそういうことを始めていて、僕らも、ほら僕らだってそういうことが出来るんだぜっていうところを見せたんだ」ということだそうだ。また、このアルバムからのヒット曲"You Better Think Twice"の未発表アコースティックバージョンもM19に収められている。
 M13からM16までは、Jimmyの最後のアルバムとなった三枚目のライブ盤、『Deliverin'』からの曲だが、"I Guess You Made It"はライブバージョンではなく、未発表のスタジオ録音だ。ライナーによると、ポコは1970年秋にいったんスタジオワークを始めたが、Jimmyの脱退の意向を受けて、録音期間が短くて済むライブ盤に変えたのだそうだ。同じスタジオセッションからのアウトテイク、JimmyがRichieの奥さんに出産祝いとして書いたという"Lullaby in September"がM20に入っている。これはとてもかわいらしいメロディのきれいな曲で、僕にとっては"Hard Luck"と並んで、このコンピレーションの最大の拾い物だった。
 ディスク1のM17、M18とディスク2のM1、M2の4曲は、1971年発表の四枚目、『From the Inside』からの曲。そのうち"From the Inside"はオリジナルマスターからのリミックス、"You Are the One"は1971年秋に録音された未発表のライブ音源になっている(このサイトのNose of Cimarronさんのレビューによれば、LAのコロンビア・スタジオで行われたラジオ・コンサートからとのこと)。Richieの表現を借りるなら、このアルバムからポコは「Paul Cotton時代」に突入したわけだが、Steve Cropperにプロデュースされたこのアルバムの録音は、バンドにはあまり楽しい思い出ではなかったらしい。Rustyは「僕の一番嫌いなポコのアルバム」とまで言っている。
 ディスク2のM3からM5は、1972年秋に発売された五枚目『A Good Feelin' to Know』からだ。ポコでのRichieの代表曲といってもよい"A Good Feelin' to Know"は、今のポコのコンサートでも必ず演奏される。『Keeping the Legend Alive』の映像でも、この曲が始まると客席の善男善女が踊りだしていたのが印象的だったが、ポコがステージでこの曲をやり始めたのが、1971年の終わりごろらしい。ライブでは大受けで、Paulによれば「僕らはあれでステージを始め、あれでステージを終わり、あれをアンコールにした」ほどだった。これこそ待ち望んだ大ヒット曲と確信したポコは、1972年の4月にツァーを一日休んでこの曲をシングルとして録音した。だから、この期待を込めたシングルがトップ100にも入らない惨敗に終わったとき、バンドは呆然とした。中でもRichieの落胆はひどく、これが彼のポコ脱退のきっかけになってしまったのは有名な話だ。ここに収められた"A Good Feelin' to Know"は、録音日が他の曲と同じ1972年の6月になっているので、誤記でなければ、アルバム用に録りなおしたものと思われるが、これを書いている時点で本家poconutのBBSでは、ここに収められたものはアルバムのバージョンと微妙に違うのではないかということが話題になっている。なお"I Can See Everything"はオリジナルマスターからのリミックスだ。
 脱退を決意したRichieは、ポコで作るのはあと一枚と決めて六枚目『Crazy Eyes』の録音にかかった―ライナーではそうなっているが、1973年4月26日号のローリング・ストーン誌に載ったRichieのインタビュー記事を読むと、そう単純な話でもなさそうだ。この記事でRichieは、前年の5月、すなわち"A Good Feelin' to Know"のシングルが出た頃に、ソロアルバムを作ることを考えていたと認めている。それを聞きつけたDavid Geffenが電話してきたのをきっかけに、1973年初め頃、ポコはマネジメントをGeffenの事務所に変えた。Richieは、ポコが売れっ子になれるものなら、それができるのはGeffenしかいないとまで彼への期待を語っている。Geffenは最初はRichieのソロを自分のアサイラム・レコードで出そうとしたが、Richieにバンド全体を引き受けてくれといわれたらしい。しかし、ポコはエピックとアルバム9枚の契約を交わしており、この時点ではあと4枚の義務が残っていた。同じ記事の中でTimは、次の1年間でアルバム4枚を出す、なぜなら僕らはアサイラム・レコードと契約したいからだ、と正直に言っている。ライナーでは触れられていないが、Nose of Cimarronさんによれば『Crazy Eyes』には二枚組という構想もあったらしい、というあたりの裏事情が見えてくるような話だ。
 だから、1973年の2月に『Crazy Eyes』のセッションが始まった時点では、RichieはまだポコごとGeffenのアサイラムに移って成功するという夢を描いていたのではないだろうか。しかし、もともとRichieひとりに興味のあったGeffenは、エピックとの契約が終わるまで待ちきれず、ポコを捨ててSouther-Hillman-Furay Bandを仕掛けた…というのは、あながち穿った見方とはいえないかもしれない。
 この記事の最後で、もしGeffenでもポコをビッグにできなければ、解散もあるのかと問われて、Timは「その可能性もある。Geffenはもし僕らが[73年の]12月までにブレイクしなければ、たぶんダメだろうと言った。でも彼は僕らにはできるといっているし、僕らもそう思っている。まだタオルは投げない」とけなげに言い切っている。このときの苦い経験が、1977年の彼のEagles移籍の伏線になったのかもしれない。
 閑話休題。そういうわけで、『Crazy Eyes』のセッションでは、アルバム一枚分をはるかに超えた数の録音が行われた。M6からM13の8曲がそのセッションで録音された曲だが、そのうち"Nothin's Still the Same"、"Skunk Creek"、"Get in the Wind"、"Believe Me"の4曲がアルバムに収められなかったアウトテイクで、このコンピレーションの二つ目の目玉になっている。"Nothin's Still the Same"は曲目一覧ではRichieの作品となっているが、ライナーではRichie Furay-Dickie Davis作品とされている。1970年に一度録音しようとして断念した曲だということなので、ひょっとしたらもともとは『Deliverin'』によって中断されたスタジオセッション用の曲だったのかもしれない。中間のテンポが変わる部分がアクセントになったのびやかなカントリーロックだ。"Skunk Creek"はRusty作のインストナンバー。"Fool's Gold"と同じ傾向の曲だが、Richie在籍時代のRustyの曲というと、ほとんどがインストなのはなぜだろう。
 "Get in the Wind"はPaulの曲だが、もともとはIllinois Speed Pressの1969年の同名デビューアルバムの冒頭を飾った曲だ。そこでの演奏は歪んだギターのイントロに導かれたへヴィなブルースロックだったが、ポコのバージョンはウェストコースト風の軽快なロックに衣替えしている。アレンジどころかメロディも変わっていて、歌詞が共通していることを除けば別の歌のようだ。Richie作の"Believe Me"は、後にSHFバンドのファーストで世に出た曲だ。ポコの演奏はSHFバンドバージョンの1.5倍ぐらいの長さがあるが、基本的なアレンジは似ている。ギターソロなども入れてよりポップロック側にふったSHFバンドのものに比べるとやや抑え目の演奏で、さびの高音のコーラスがいかにもポコらしい。これと"Get in the Wind"の2曲は、どちらも完成度の高い録音だが、ポコというよりはSHFバンドに近い演奏で、それが最終的にアルバムに収録されなかった原因かもしれない。逆に、RichieがもしSHFで"A Good Feelin' to Know"をカバーしていたら、というのも楽しい空想だ。
 Richieが抜けた後、ポコはもう終わりだと散々言われたらしい。また、Rustyによると、ポコのファンを「バンドを抜けた誰か」についていかせるために、ポコの解散を望んでブッキングを妨害するようなことをしたプロモーターまでいたという。そういう人たちを見返すべく、4人組となった新生ポコは、1974年に通算七枚目のその名も『Seven』と八枚目『Cantamos』の2枚のアルバムを出した。ここでは『Seven』からM14とM15の2曲、『Cantamos』からM16からM18の3曲が聴ける。Richieの影を振り払うべく、『Crazy Eyes』のセッションでのアウトテイクはすべてお蔵入りにしたポコだが、Paulの異色作"Faith in the Families"だけは録音しなおして『Seven』に収録している。アルバムに収める曲も、Georgeを除く3人が均等に持ち寄るようになって、Rustyの曲にもボーカルが入るようになるが、まだRustyは歌っていないようだ。このコンピレーションの最後を締めるRusty作の"Sagebrush Serenade"は、のどかなカントリーバラードから一転してスティール、バンジョー、ドブロとRustyが弾きまくるブルーグラスへと展開する、新生ポコを象徴する名曲だ。ここに収められた録音では、『Cantamos』に収録されたときにはカットされたと思われる、演奏後のバンドのやり取り(「コロラドを覚えてるかい」)まで聴くことができる。
 この『Cantamos』の特殊ジャケット(ジャケットに窓が切ってあって、そこから中袋の4人の絵が見えるという趣向)にかかった追加費用の負担をめぐるエピックとの争いに端を発して、このアルバムを最後にポコはABCに移籍することになる。
 最後に少し私的な感想など。
 僕がポコを聴きだしたのは、最初にも書いた通り、『Indian Summer』からだ。そこを起点に、『Seven』まで遡り、『Legend』をリアルタイムで聴いてはまった。だから僕にとってのポコは、カントリーロックのパイオニアというよりは、ウェストコースト・ロックバンドだったし、『Head Over Heals』『シマロンの薔薇』『Indian Summer』の三部作が一番のお気に入りだった。しかし、今回このレビューを書かせてもらうにあたり、しばらく聴いていなかった『The Forgotten Trail』を繰り返し聴くことになって、ポコへの認識を新たにしたように思う。これまで初期のポコを聴いたことがなかったわけではない。『カントリーロックの貴公子、ポコ誕生!』は中古盤ながらLPで持っている。でも、これまでは正直言ってあまりピンと来ていなかった。おそらく僕がリスナーとしていろいろ経験を積んだこともあるのだろう。年齢もあるかもしれない。僕にとっては、今回のレビューで、「忘れられた道」ではなく「新たな発見の道」をたどることができたのは、うれしいことだった。
(J-BOY)



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