■ Pocoのディスコグラフィー



■ Blue and Gray (1981)

Blue and Gray

01. Glory Bound (Young) 03:35
02. Blue and Gray (Young) 04:40
03. Streets of Paradise (Cotton) 03:55
04. The Writing on the Wall (Young) 03:10
05. Down on the River Again (Cotton) 03:45
06. Please Wait for Me (Cotton) 04:30
07. Widowmaker (Young) 04:25
08. Here Comes That Girl Again (Young) 03:15
09. Sometimes (We Are All That We've Got) (Cotton) 03:35
10. The Land of Glory (Young) 03:35

■ アルバムレヴュー

  『Indian Summer』(77)を最後にTimothy .B SchmitとGeorge Granthamが脱退し、ベ−スにCharlie Harrison、ドラムスにSteve Chapmanを加えて新生Pocoが誕生した。『Legend』(78)で最大のヒット曲「Crazy Love」も生まれ順調な滑り出しを見せた新生Pocoは、その後も積極的な活動を続ける。『Under The Gun』(80)、『Blue And Gray』(81)は本作。その7ヶ月後の’82年2月に『Cowboys & Englishmen』、さらに7ヶ月後の’82年9月の『Ghost Town』と立て続けにアルバムを発表している。この時期のPocoがいかに充実していたかという証だ。大半がカバ−曲だった『Cowboys & Englishmen』は別として、この時期のPocoのキ−ワ−ドは〔脱カントリ−フレ−バ−〕だろう。パンク・ニュ−ウェイブが台頭し、テクノミュ−ジックが注目されつつあった時代に、自らの立脚点を再構築するかのごとく、今までにないサウンドに挑戦していった時期だ。本作『Blue And Gray』は、Pocoにとって初めてのキ−ボ−ド奏者Kim Bullardを加えて5人体制で発表した、南北戦争をテ−マにしたコンセプトアルバムである。ソングライティングにかなりのエネルギ−を必要とするコンセプトアルバムに挑戦するあたりも、この時期のPocoが充実していた事を裏付けている。
 プロデュ−スは、バンドサウンドをロック寄りに舵取りした前作同様Mike Flicker。加えて本作の特徴は、前述した通りキ−ボ−ド奏者Kim Bullardを加えたサウンドだ。Timothyが抜けたことで、Rustyがリ−ドボ−カルとしてフロントに立つことが増えたため、その際のサウンドの厚みを加える意味もあったのだろうと推測する。収録曲は全10曲。Rusty作6曲、Paul作4曲という内訳だ。
 アルバムはRusty作「Glorybound」で幕を開ける。以前のPocoは爽やかな明るいイメ−ジが強かったが、この曲のようにシリアスな印象を与えるハ−ドエッジタイプの曲も多くなっていく。美しいアコ−スティックギタ−の音色を活かしながらも、ドライブの利いたエレキギタ−がうねり、ベ−スとドラムスがタイトにサウンドを引き締めている。
 「Blue And Gray」もRusty作。美しいメロディ−のバラ−ドに仕上がっており、Poco風のバラ−ドの新しいスタイルが確立されつつある事を伺わせる佳曲。途中からリ−ドボ−カルがPaulに替わるアレンジに、この時期のPocoをとても強く感じる。
 2本のエレキギタ−のリフに始まり、ベ−スのリフに引っ張られるように曲が進行していく「Streets Of Paradise」はPaul作。数年前のPocoには考えられない曲だが、キ−ボ−ドも大きな役割を果たしており、新生Pocoの可能性を雄弁に物語っている。
 再びRusty作「The Writing On The Wall」。アコ−スティックギタ−のアルペジオ奏法が美しいフォ−ク調の曲。TimothyとGeorge脱退後、リ−ドボ−カルをとるようになったRustyだが、こういった曲調での彼のボ−カルは非常に説得力がある。Richie Furay脱退後にRustyが曲を発表するようになった時に思ったものだ。なぜもっと早く彼の曲を採用しなかったのかと。そして今、同じ事を考えてしまう。なぜ彼にもっと早くから歌わせなかったのかと・・・。
 「Down On The River Again」はPaulのペンによるもの。このアルバムで少ない明るい雰囲気を持った曲で、マンドリン、ドブロがフュ−チャ−されており、以前のPocoらしいサウンドに仕上がっている。
同じくPaul作「Please Wait For Me」。トレモロのマンドリンが美しい曲だが、やはりカントリ−フレ−バ−は抑えられており、新生Pocoバラ−ドの典型といっていいだろう。切々と歌いあげるPaulの歌唱力は、見事というしかない。
 続く「Widowmaker」はRusty作のロックチュ−ン。ハ−ドエッジのギタ−リフを曲の背骨に据えたアレンジで、キ−ボ−ドも大きくフュ−チャ−されている。このアルバムで唯一のシングルカット曲。他にもシングル候補はあったのだろうが、ロックバンドとしてのPocoをアピ−ルしたかったのだろう。エンディングのPaulのギタ−ソロはスリリングだし、そこに被さるゴスペル風の女性コ−ラスも非常に効果的だ。
 「Here Comes That Girl Again」もRusty作。ふわふわと漂うコ−ラスが印象的で優しい感じの曲だ。この曲でもキ−ボ−ドが全体を包み込んでおり、このフォ−マットは後作『Ghost Town』に引き継がれていく。
 やっとという感じでカントリ−サウンドが登場する「Sometimes(We Are All Got)」はPaul作。何とこのアルバムでこの曲が初めてのスティ−ルギタ−を使用した曲なのだ。この曲ではカントリ−風な演奏だが、このアルバムの前数作でPocoはカントリ−を感じさせないスティ−ルギタ−のアレンジを獲得しており、この曲以外でもそういう使い方は十分にできたはずだ。バンドの変革にあたり、得意の武器をぎりぎりまで封印する心意気を感じる。
 ラストを飾るのはRustyの「The Land Of Glory」。大地を踏みしめるようなリズムのメロディ−とゴスペル風の女性コ−ラスが印象的で、Rustyの力強いボ−カルも心地よい。ラストにこの曲をもってきた事で、アルバム全体の印象が2割は明るくなっているような気がする。
 コンセプトアルバムという事もあり、ト−タルな方向性を重視したのだろう、強いポップ性のある曲が無いために、地味な印象を受けるアルバムだが、前作とはちょっと違う、ひねったアレンジのロックチュ−ンが目立つのが興味深いところだろう。以前のような突き抜けるような完璧なコ−ラスが影をひそめたのは残念だが、逆に言えば、この時期Pocoがやろうとしていた事には、あのコ−ラスは必要なかったのかもしれない。バンドが変革を遂げようとしている時期のコンセプトアルバム。それだけでも十分魅力的なアルバムだ。

(Good Company)



INDEX