■ Pocoのディスコグラフィー



■ Legend (1978)

Legend

01. Boomerang (Cotton) 03:48
02. Spellbound (Young) 05:13
03. Barbados (Cotton) 03:31
04. Little Darlin' (Young) 03:47
05. Love Comes Love Goes (Young) 03:55
06. Heart of the Night (Cotton) 04:49
07. Crazy Love (Young) 02:55
08. The Last Goodbye (Young) 05:40
09 Legend (Young) 04:16

■ アルバムレヴュー

 1978年発表、通算13作目となる本アルバムは、ジャクソン・ブラウンのデビュー盤を手がけたリチャード・サンフォード・オショフによりプロデュースされ、前作と同じくABCレーベルよりリリースされた。
 ティモシー・シュミットのイーグルス加入に伴う脱退、そして、続いて起こったコットン・ヤング・バンドへの改名騒動によりジョージ・グランサムが脱退、と一気にバンドは瓦解への道筋を突き進んでいくかのようであったが、ほどなくチャーリー・ハリスン(ds)とスティーヴ・チャップマン(b)をリズム・セクションに補充し録音された。
 その改名騒動であるが、結局はバンド自体がそこそこの知名度を持っているにもかかわらずそれを捨て去るのはマーケティング上問題、というABCレーベルの意向に沿う形で、ポコの名前を存続させることとなった。そしてそれはバンド史上初のトップ40ヒット、それも2曲連続のトップ20入り、さらにアルバムも最高位14位でゴールド・ディスク(50万枚超のセールスでRIAAより付与される)という誰もが予想しなかったヒットとなって結実する。
 それまではアルバムこそまあまあの売れ行きを示すものの、シングル・ヒットといえば75年の Keep On Tryin' および 77年の Indian Summer がそれぞれ最高位50位を記録したにとどまっており、マイナー・バンドとはいわないもののメジャーまではあと一歩か二歩という位置にいたといえるのではないか。彼らと同様シングル・ヒットをほとんど出していなかったグレイトフル・デッドやリトル・フィートのようにはファンを熱狂させるカリスマ性もなく、かといって誰もが知っているトップ40常連、というほどの知名度もなかったわけである。
 なんとも皮肉なことが2つある。一つ目。そもそもティモシー・シュミットはバンドがそれまであまり売れないことに嫌気が差していた。それもあって、イーグルスからの移籍オファーには飛びついたのであるが、それが脱退したとたんのバンド史上最大のヒットである。たら・ればは禁物であるが、従前のアルバムがもう少し売れていれば...という気になってしまうのだが。
 二つ目。B・B・キングやレイ・チャールズ、ロックのジャンルだとスティーリー・ダンやジェイムズ・ギャングといった錚々たる売れっ子アーティストを抱えていたABCレーベルが Legend の発表後ほどなくして倒産。そののちMCAに吸収されるという事態に陥った。
 サウンド面を見てみよう。それまでリッチー・フューレー脱退後しばらく安定していた4人のメンバー全員によるヴォーカル/ハーモニーという特色を持っていたポコであるが、2人が抜けたのちのコーラス・パートをうまく響かせることに腐心している節も見受けられる。が、初参加のチャーリー・ハリスンもそこに加わったため、ヴォーカル面で貧弱な印象を与えるということはほとんどないのがうれしい。
 新メンバーのイギリス人2人によるリズム・セクションもややタイトであり、それは1曲目の Boomerang、タイトル・テューンの Legend など切れのいいロックン・ロール・ナンバーが特に象徴的である。さかのぼること2年前にイーグルスがブリディッシュ・ロック色のとても濃い路線に転換した Hotel California がそれにダブって見えてしまうのは筆者だけであろうか。
 また、Little Darlin' のように従前見られた軽快さも残しつつ、切れのあるリフも含む曲の構成も当時としては斬新であった。
 この流れは次作、Under The Gun で、当時台頭していたメロディアス・ハードロックの世界では売れっ子であったマイク・フリッカーをプロデューサーに迎えることでさらに加速されたといえる。その方向性は決定付けたのはこの Legend であった、というのはバンドの転換期によく見られることであろう。
 作曲面でもティモシー脱退による影響は最小限にとどめられたといえよう。ライターとしての才能は3人とも大きな差異はなく、また、そのスタイルも共通するものがあったと思われるのだが、ティモシーの作風はその中でもっともスィートでポップなテイストを持っていた、という見方に異論をはさむ人は少ないだろう。今回は彼が抜けた穴を、残ったポールとラスティが見事それを埋め、それどころか大胆に発展させたという意味でも興味深い。
 捨て曲はなく、リズムの強弱をつけながらぐいぐいと聴き手を引きずり込んでいく、A面の5曲。レコードを反転すると、必殺のメロディ・ラインが非常にノスタルジックであり、心地よい Heart Of The Night、エンディングの余韻が美しすぎるほど美しい Crazy Love、そしてその余韻を継承するがごとく、どこまでもスロー・テンポかつ力強くじわじわ迫る The Last Goodbye − アルバムの締めくくりは思い切りハードにドライヴィングする Legend と、これ以上のものを彼らに求めるのは酷であることは間違いない。
 カントリー・ロックというカテゴリーは、もはや彼らにとってふさわしい「器」ではない。まさにカテゴリー不要論の代表格として、さらにはロック・バンドとしての確固たる地位を、このアルバムで確立したのではないかと思える見事な仕上がりになっている。
(Dash)



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