■ Pocoのディスコグラフィー



■ Crazy Eyes (1973)

Crazy Eyes

01. Blue Water (Cotton) 03:07
02. Fools Gold (Young) 02:23
03. Here We Go Again (Schmit) 03:28
04. Brass Buttons (Parsons) 04:17
05. A Right Along (Cotton) 04:43
06. Crazy Eyes (Furay) 09:39
07. Magnolia (Cale) 06:18
08. Let's Dance Tonight (Furay) 03:54

■ アルバムレヴュー

 Pocoの通算6枚目のアルバムであり、Richie Furay在籍期の最後のアルバムでもある。録音は1973年の2月から開始されている。この時点ですでにRichieが脱退する事はほぼ決まっていたと思われるのだが、この「Crazy Eyes」は予想以上にRichieの色の強いアルバムとなった。

メンバーは、

Paul Cotton : Guiter, Vocals
Richie Furay : Guiter, Vocals
Rusty Young : Pedal steel guitar, Dobro, Banjo, Lap Steel
Timothy B. Schmit : Bass, Vocals
George Grantham : Drums, Vocals
 本来は2枚組という構想もあった「Crazy Eyes」だが、結局8曲入りのシングル・アルバムになった。それだけに多くのアウト・テイクが存在しており、その内の"Nothin's Still The Same", "Believe Me", "Skunk Creek", "Get In The Wind"は後に「The Forgotten Trail」に収録された。また"Krikkit's Song (Passing Through)", "Faith In The Families"は「Seven」に収録され、"Believe Me"の方はSHF Bandのデビュー・アルバムで再演されている。
 さて、まずはどうしても触れておかなければならないRichieのPocoからの脱退。絶対の自信を持って送り出した"A Good Feelin' To Know"が結果的に泣かず飛ばずだった事でRichieの中に芽生えた不満と焦燥はよく理解できる。「これが売れなきゃ何を売れってんだ?なにかが違うんだよなきっと、よしちょっとPocoを離れてやってみるか」.......よくある話しではある。他のメンバー達も同様のフラストレーションを感じていたであろうだけに、Richieの気持ちを理解し、平和なる脱退劇となった。 ところで実はかなり早い時期からRichieはChris Hillman、Al Perkinsとバンドをやろうかという話しをしていたようだ。この時期、HillmanとPerkinsは共にStephen StillsのManassasのメンバーだったが、その音楽性の違いにフラストレーションが溜まっていたようで、コンサートでは2人によるアコースティック・セットがわざわざ行われたりもしていた。そして共にコロラド在住だった事もあり、やはりフラストレーション化していたRichieと共にバンド結成の話しを始めた訳だ。さらに同じくManassasのメンバーだったPaul Harrisもこの時点で参加、Perkins以外の2人は「Crazy Eyes」にも参加している。
 J.D. Southerをグループに入れるように提案したのはDavid Geffenで初めはJohnny Barbata (ex-the Turtles, CSN&Y, Jefferson Starship)がドラマーとして参加する予定だったらしい。
 ここでヒストリーに付き物の「IF」のお話し........もしRichieの脱退によってPocoが解散していたらおそらくかなりの確率でGeorge GranthamがSHF Bandのドラマーになっていただろう。「Crazy Eyes」が発売されRichieが正式にPocoを抜けた翌月にHillmanのプロデュースでRick Robertsのセカンド・ソロ・アルバムのレコーディングが行われているが、ここにGeorgeは参加、早くもHillman、Perkins、Harrisとの顔合わせが実現している。さらには77年にGeorgeがPocoを辞めるとすぐにMcGuinn, Clark & Hillmanのオーストラリア・ツアーに参加しているなど接点が多いだけにありそうな話しではある。
 それにしても、もしSoutherがいないRichieとHillman、Perkins、HarrisプラスGeorgeのバンドだったらどんなアルバムになったのだろうか?興味深い。
 閑話休題、軽快なPaul Cotton作"Blue Water"で幕を開ける「Crazy Eyes」はPoco史上でもっとも豪華な作品でもある。The Guess Whoの「Share The Land」や「American Woman」で有名なJack Richardsonが前作に続きプロデュースし、前述のex-Manassas組、Hillman、Perkins、HarrisにJoe Lalaも、そしてロスのカントリー系スタジオ・プレイヤー等がゲスト参加。その上にストリングスとホーンのオーケストラもフィーチャーされる。Rusty Young曰く「First Class Record」である。まさにRichie最後の大仕事といった感があるし、アルバム・カバーや内袋の憂いを含むデザインと色合いも印象的。全体的にどこかメランコリックなイメージのあるアルバムとなった。
 さてゲスト・ミュージシャンの中でも異色なのがLPではB面の頭だったRichie作の"Crazy Eyes"でアレンジを担当したBob EzrinとAlan MacMillan、それにドラマーのAynsley Dunbarである。
 Bob Ezrinは、かのAlice Cooperの「School's Out」と「Billion Dollar Babies」をプロデュース、また「Crazy Eyes」録音時の1973年にはLou Reedの「Berlin」やex-Turtles、ex-Frank Zappa & the Mothers Of InventionのFlo & Eddieもプロデュースした敏腕プロデューサーだ。彼はのちにPink Floydの「Wall」や「A Momentary Lapse Of Reason」、「The Division Bell」をもプロデュースしている。
 Alan MacMillanはEzrinがプロデュースしたLou Reedの「Berlin」のキーボード奏者でAynsley DunbarもEzrinがプロデュースした作品で数多く叩いている元John Mayall's Bluesbreakers, Frank Zappa & the Mothers Of Inventionのドラマーでこの後Journey, Jefferson Starshipに加入している。クレジットには名前はあれどドラムの表記がないので見過ごされていた感があるが、"Crazy Eyes"のドラムはGeorgeではなくDunbarである。
 アルバム・プロデューサーのRichardsonとEzrinはAlice Cooperの1971年のアルバム2枚で協力しあった関係であり、このルートから"Crazy Eyes"のアレンジを依頼したらしい。この9分以上ある大作はEzrinとMacMillanのアレンジによってオーケストラを含めた映画の(それもなんかウエスタンのようなルーツィーないなたさのある)サウンド・トラックのような展開をみせる。発売当時、なんかプログレみたいとか言うファンもいたが、後に映画音楽作家になったMacMillanとPink FloydのEzrinですからねぇ〜、それも当たりだったのかも。ましてやGram Parsonsに捧げて書かれた曲だけにプログレッシブな要素は充分にあるという事か。
 "Crazy Eyes"もレコーディングの1年前に書かれた曲だが、このアルバムのセッションでは各メンバー達の古い曲が多くレコーディングされている。PaulがIllinois Speed Press時代に書いた"Get In The Wind"や1970年のRichie作"Nothing Still The Same"等がそうだ。そしてさらに2曲のカバーもレコーディングされた。
 Richieが唄う"Brass Buttons"は一時はPocoのメンバーにと噂されたGram Parsonsの曲。彼の遺作である1974年リリースの「Grievous Angel」にも収録されている(録音はPocoに送れること数ヵ月、1973年の夏、結局Parsonsは「Crazy Eyes」の発売後1ヵ月もたたない内に事故でこの世を去った)。元々は60年代にまだRichieもParsonsもグリニッジ・ビレッジのフォーク・シンガーだった頃に書かれた曲でその頃からRichieの心を捉えていた曲だそうだ。どーりで力の入ったヴォーカルを聞かせているはずだ。ParsonsのVersionの方がいいという声も多いがわたしは断然こっちだ。Georgeのタメにタメたドラムのフィルと遠いところで響くヴォーカルのディレイが涙を誘う。
 PaulのヴォーカルとRustyのスティール、そして圧巻のコーラスがこちらも涙なしでは聞けない"Magnolia"はEric Claptonが敬愛し、"After Midnight"や"Cocaine"を取り上げたことでも知られる南部の名物ギタリスト/シンガー・ソングライター、J.J. Caleの作品。1971年の「Naturally」に収録。そ、穴熊ジャケットのやつです。
 現在でもPocoはステージでこの曲をよくプレイするが、Paulのヴォーカル・スタイルにピッタリとマッチしたメロディー、そしてとろけるスティールに美しいハーモニー、確実にオリジナルを超えた"Pocoの名曲"となっていると思う。頭のカウント「one, two, three...」ですでに泣けます。この曲のアレンジはBen McPeek, この人も後に映画音楽家になっているが、視覚的なオーケストラの使い方が見事。
 それにしてもGeorgeのタメ、タメ、タメ、もひとつタメのドラムがこの曲でもいい味をだしている。タメの王様、Russ Kunkel & Nigel Olssonにも負けないタメっぷりが最高です。
 Rusty (Banjo, Dobro)やHillman (Mandolin), Bill Graham (Fiddle)のブルーグラス趣味満開、ライブでも盛り上がる"Fools Gold"はRustyらしいフット・ストンピン・カントリーに仕上がっているし、Timothy B. Schmitの"Here We Go Again"は中間部のギター・ソロとコーラスがクイクイくる佳曲。いつものPocoというか、なんかホっとする感じの"Let's Dance Tonight"や「Seven」以降のFab Four時代の予告編のような"A Right Along"もいい曲だ。こうして聞いてみるとRichieがこれ以上どーすればいいのよ的になるのも無理はないという程、完成度の高いアルバムである。もし、これが2枚組だったら?ひょっとするとPocoの評価はまた違ったものになっていたかもしれない。コンプリート・エディションのCD発売を切に願うわたしである。
Here We Go Again  1973年の9月の発売当初、戸惑いを持って迎かえられた「Crazy Eyes」だが、その後評価を高め、最終的にはチャートで38位と「Deliverin'」以来のヒット作となった。 Magnolia
シングルも"Here We Go Again"("Fools Gold"とのカップリング)と"Magnolia"("Blue Water"カップリング)がリリースされている。

 RichieのPocoとの最後のレコーディングであるだけでなく、そのプログレッシブなカントリーとロックの融合が一つの頂点を極めたという意味でもまさにPocoにとってエポッコ・メイキングな、いやエポック・メイキングなアルバムと言えるだろう。この後、大きな苦難を乗り越えた4人組のPocoはロック色を強めつつも輝きを増していく事となる訳だ。
 ちなみにこのアルバムは5.1ch, DTSサラウンド・ミックスのCDも発売されている。Rustyがそこらじゅうを飛び交います。面白いのでシステムをお持ちの方はぜひお試しあれ!
((Nose Of Cimarron)



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