■ Pocoのディスコグラフィー



■ From the Inside (1971)

From the Inside

01. How Down (Furay, Young) 02:04
02. Bad Weather (Cotton) 05:02
03. What Am I Gonna Do (Furay) 03:46
04. You Are the One (Furay) 03:48
05. Railroad Days (Cotton) 03:35
06. From the Inside (Schmit) 03:10
07. Do You Feel It Too (Furay) 05:32
08. Ol' Forgiver (Cotton) 03:38
09. What If I Should Say I Love You (Furay) 03:37
10. Just for Me and You (Furay) 03:37

■ アルバムレヴュー

 ある意味、私の人生を変えたともいえる「Deliverin'」の次のアルバムという事で物凄い期待感のあった作品だ。発売は1971年。このアルバムが発売される日は妙にハイ・テンションだったのを覚えているし、レコード店で予約しておいたこのアルバムを手にした時の興奮は忘れられない。
 極上作品の次という事と同時にJim MessinaのいないPocoの初のアルバムという事も期待感を煽っていた。Paul CottonがJimに替わってメンバーとなった初のスタジオ録音が聞けるのだから期待するなって方が無理だろう。メンバーは、
Paul Cotton : Guiter, Vocals
Richie Furay : Guiter, Vocals
Rusty Young : Pedal steel guitar, Dobro, Lap Steel
Timothy B. Schmit : Bass, Vocals
George Grantham : Drums, Vocals
 PaulをRustyに紹介したのはChicagoのPeter Ceteraで彼はRustyにPedal steel guitarを習っていた。PaulのいたIllinois Speed PressとPeterのChcagoは共にJames Willian Guercioにプロデュースされていた関係ですでに知り合いだったのだ。
 それにしてもプロデューサーがSteve Cropperというのには驚いた。SteveはBoker T. And the MG'sのギタリストであり、Otis Reddingの"(Sittin' On The) Dock Of The Bay"や Wilson Pickettの"In the Midnight Hour"の作者としても有名だがカントリー・ロックというよりは、むしろR&BをメインとしたStax系のサウンド・プロデューサーだったからだ。この人選は当時のCBSの社長、Clive Davisによるものらしいが、それまでJimがやっていた事を考えるとただのギター繋がりかいっ!とも思えてしまう。だがこの事がJimの穴を埋めるというより、Jimの影を消し去るという効果を生んでいるのも確かだ。
 レコーディングは71年の5月からMemphisのTrans Maximus Studioで行われているが、長いツアーの後、家に帰らずMemphisに直行させられたメンバー達にとってはあまり良い環境ではなかったようで、「やっつけ仕事」だの「好きじゃないアルバム」などと印象が悪い。またファンの間でも期待感が高かった分、ちょっとガッカリなどという声も聞かれ、こちらも高評価とはならずチャートでも52位と前作を下回ってしまった。
 だが、このアルバムには佳曲が多い。いや、本当に!コーラスと手拍子から始まる"Hoe Down"は後の"Fool's Gold"や"Rocky Mountain Breakdown"に通じるGood Foot Stompin' Musicだし、PaulのIllinois Speed Press時代の曲"Bad Weather" (Illinois Speed Pressの1970年発表セカンド&ファイナル・アルバム"Duet"に収録)は現在でもステージで唄い続けられている名曲だ。
 RustyのPedal SteelがSweetなカントリー・バラードの"What Am I Gonna D0"ではRichieとTimのハーモニーが泣ける。Richieが書いた曲の中でもかなりカントリー色の強い曲だ。ここではPaulとGeorgeも加わった4声のコーラスも聞ける。
 "You Are The One"は当時の彼等のステージではアコースティックでハーモニー・メインのアレンジで演奏されていた。その模様は「The Forgotten Trail」に収録されている。(ちなみに「The Forgotten Trail」のバージョンは71年の9月30日にLAのColumbia studioで行われたラジオ・コンサートからでこの時の演奏から有名なブートレッグ「Country Bump」が作られた。) Railroad Days / You Are the One
 Paulの"Railroad Days"は新生Pocoを感じさせるハードなRock Edgeを持った曲で"You Are The One"とのカップリングでシングル・カットされた。当時、TVのMidnight Specialというライブ番組で演奏しているのを見たがPure Rockしていた。特にPaulのギターがヘビーだったのとRichieのステージ・アクションがえらいRock "n" Rollだったのが印象的。
 このアルバム中唯一のTimの曲がタイトル曲の"From The Inside"。まさにらしい曲で優しい気持ちになれる佳曲。この曲のPaulのギター・ソロは彼のギタリストとしての幅の広さを感じさせる。
 出ました、レスリー・スピーカーwithスティール=オルガン!ある意味初期Pocoの薫りを一番残している曲が"Do You Feel It Too".だがPaulによるギターがJimとの違いを明確にしており、いいブレンド具合で新Pocoサウンドを構築している。それにしても最近、このオルガン・サウンドをやってくれないRustyではある。
 Paulの"Ol' Forgiver"はRustyのDobroがはまりまくった南部臭の強い曲だ。GeorgeがThe BandのLevon Helmを軽くしたかのようなドラムを聞かせる。プロデューサーのSteve Cropperがこの後、Levon Helm's RCO Allstarsに参加する事を考えるとSteveの発想か?ただハーモニーが出てくるとまさにPocoという感じになる。この路線はもっと聞いてみたかった。
 Richieの"What If I Should Say I Love You"はハードさとスイートさを併せ持ったバラード。GeorgeとTimのハイ・ハーモニーが楽しめる。この曲も初期Pocoの薫りを感じさせるが、やはりPaulによるギターがサウンドの要になっているところが新しい。
 ライブでも"What If I Should Say I Love You"と続けて演奏されていた"Just For Me And You"はアコースティック・ギターのリフがとても印象的な曲で、Rustyのドブロ・ソロも大変美味しい。この当時のRustyはスティールとドブロを大変うまく使い分けており、それがアーシーなPaulのギターと相まって中期Pocoの独特なサウンドを構成していた。 Just for Me and You / Ol' Forgiver
この曲ではRichieの書くメロディーと声にGeorgeとTimのハイ・ハーモニーが絡みRustyとPaulのダウン・トゥ・アースなプレイがブレンドされ、このアルバム以降のPocoサウンドのプロト・タイプのようなものが聞ける。ちなみに"Just For Me And You"は"Ol' Forgiver"とのカップリングでシングル・カットされている。
 全体的にこのアルバムはPaul Cottonのデビュー作として、またJim Messina抜きのPocoのデビュー作として充分に機能している作品だと思う。南部のSteve Cropperがプロデュースした事で今までのイメージをうまくシフト・チェンジできたと同時にPaulのサウンドを上手にPocoの中に取り込んだともいえる。それはIllinois Speed Press時代の曲"Bad Weather"がなんの違和感もなくPocoの曲として記憶され唄い続けられている事や、逆にIllinois Speed Pressのアルバムで感じられるPaulのPocoっぽさ(1枚目収録の"P.N.S. (When You Come Around"等)がより完成形に近づいている事でもわかる。
 また、アコースティック・ギターが多用された事がうまいアクセントになっていてハードっぽいRockさを調和してPocoらしさに繋げている。
 さらにもうひとつ、エンジニアーがJimでなくなった事で全体的な音の傾向が変化しているというのも興味深い点だろう。これによってBuffalo Springfieldの影も取り去る事が出来たといえる。特にGeorgeのドラム・サウンドに厚みとタメが出てきており、この事もPocoのサウンドのRock化に貢献している。ドラムの音だけならKenny Loggins with Jim Messinaのデビュー作「Sittin' In」の方が以前のPocoに近いくらいだ。
 ところで以前、Steve Cropperに会う機会があったので、このアルバムについて聞いてみたのだが、Steveはあまりよくは覚えていないようで、レコード会社からの依頼でやったという事とリズム・セクションが予想以上に良くてびっくりしたという事、そしてTimの声が凄く好きだった(その後、TimはSteveのソロ・アルバムにも参加、またRobbin Thompsonのアルバムでも共演している)という事くらいしか記憶がないと言っていた。ただ特にリズム・セクションについてはよほど驚いたらしくカントリー・ロックの中では珍しくグルービーなリズムだったと言っていた。
  いずれにしろこのアルバムから始まった 新生PocoはRichie FurayとPaul Cottonをメイン・ソング・ライターとしてこの後、より完成された「A Good Feelin' To Know」へと続いていく事となる。そして私もよりPocoへと没入していくのだが、年代的にもサウンド的にも妙に甘酸っぱい気分にさせてくれる思い出のアルバムがこの「From The Inside」である。

(Nose Of Cimarron)



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